こんにちは。サポネアンバサダーの高木です。
今回紹介する本は、
「差別の哲学入門」 (池田喬・堀田義太郎著、アルパカ合同会社)
です。
この本は、日々生活する中で誰もが経験する、すごく重要で、とても複雑で、すぐには答えが出ない問いや概念を、どう考えたり、どう対応すればいいかわからない時に、考え方の道案内をしてくれる本です。
差別について、「差別とはどういうものか」「差別はなぜ悪いのか」「差別はなぜなくならないのか」という問いに、哲学的に考えていきます。
この本をなぜ紹介したいかというと、今の社会では、さまざまな背景を持った人と共に暮らしていく中で、差別はいけないことだと誰もが知っているのに、なかなか解決されない差別の問題って、いったい何なんだろうという問いに、一定の答えが書かれていると思うからです。
僕は、高校生の時に、差別はなぜなくならないのか疑問に感じていました。大学では、心理学を勉強して人の気持ちの複雑さを知って、その後もずっと考えてきました。大学の時に、僕は、対話を中心とした、誰でも参加できるサークル「何でも言っていいん会」を作って、毎週月曜日に、いろんなテーマで話し合いました。誰もが自分らしく過ごせて、一人一人の個性をお互いに認め合う場所であることを大切にして、日々の対話の中から、どのようにしたら、いろんな人がともに学び、生きていける社会が当たり前になるのかを考えました。
2015年10月、僕は、京都の紫明会館で開かれていた“シリーズ「どう知り、どう生きるか」探Q複数の視点で考えるカフェ@京都紫明会館”の第2回「差別はなぜ悪いのか」に参加しました。ガイドは菊地建至さん(探Q複数の視点で考えるカフェ/金沢医科大学)、その日のゲストは、この本の著者の一人の、堀田義太郎さん(東京理科大学)でした。堀田さんは、いろんな具体例を挙げながら、「差別はなぜ悪いのか」について、いくつかの説を紹介し、考察してくださいました。
翌日、僕のサークルで堀田さんの講演の内容を説明して、「差別」をテーマに話し合いました。みんなから、いろんな話が出てきて、堀田さんに紹介していただいた説に従って、差別になるか考えました。あるエピソードについて堀田さんに質問したところ、丁寧に答えていただきました。差別について、さらに教えていただき大変勉強になりました。また、サークルで差別について話し合って、ふだん聞くことができない、みんなの気持ちを知ることができました。サークルの役割を感じました。
この本には、「差別はなぜなくならないのか」についても書かれています。僕が印象に残っているのは、悪気はなくても差別は起こる、ということです。統計的差別といって現状の社会に基づいた差別のほか、配慮しているつもりが差別になるマイクロアグレッションや潜在的偏見によるものなどです。
悪気はなくても差別は起こることの1つの解決策として、接触理論があります。接触理論とは、偏見の問題は相手のことをよく知らないことが問題であり、相手と接触することが増えれば、カテゴリー化するのではなく個人として相手を見るようになり偏見がなくなる、というものです。但し、注意が必要なのは、さまざまな特徴を持った人々が単に混じり合いさえすれば良いのではなく、一定の時間にわたって、学校や会社などの制度化されている環境で、共通の目標を追求する共同活動に従事することなどが条件とされていることです。
また、制度的でない親密な関係であっても、接触が偏見の軽減に役に立つ可能性についても書かれています。相手「を」見るのではなく、相手「と一緒に」見る中で、それぞれの見方や考え方に触れることが大切になります。
この本を読んで、差別は悪いと誰もがわかっていてもなぜなくならないのか、私たちの中にある根強い差別的傾向に対して、どのような取り組みが可能であるか、これから社会でますます必要で難しい問題を考えて欲しいと思います。
サポネアンバサダー 髙木 智志