こんにちは!
スタッフの義岡です^^
サポネ通信86号でも、工房はんどさんへインタビューした記事を掲載しましたが、このブログには全文を掲載しています♪
サポネスタッフの名刺は、障害のある方たちが働く場「合同会社工房はんど」で作っていただいています。
しかし、ここで働く障害のある方たちは、名刺の印刷などをしているわけではありません。なんと、似顔絵を描いていただいているのです!
工房はんどは、近鉄滝谷不動駅から徒歩30秒のところにあり、利用者5名からスタートし、現在20名の登録者がいます。
温かな雰囲気に包まれた工房内では、制作活動をしている傍ら、アーティストさんの個性が豊かに表現されている作品が販売されています。
今回は代表の安野さんにお話しを伺いました。
もともと化粧品会社の営業マンだった安野さんですが、交通事故に遭って今までの仕事ができなくなり、福祉の仕事に転職したとのこと。
知的障害のある人の支援をする法人で、相談員として約16年勤めました。
それから別法人の障害福祉サービス事業所へ転職しましたが、1年半で事業整理されたことを機会に、2016年12月、就労継続支援B型事業所「工房はんど」を立ち上げました。
工房はんどでは、手書きのデザインから、独自にテキスタイルを創り、裁断から縫製まで自社で製造・販売しています。
———私(義岡)がはじめてお会いした時は、まさに開所してすぐのときでした。開所までの経緯をお聞きするだけで苦労されたのだなと感じます。でも、そう感じさせないくらい、あの時も今日も、とても素敵なイラストや商品がたくさん並んでいますよね。なぜアート活動に専念しようと思ったのですか?
安野さん
相談員として勤めていた頃、障害のある人やその家族をお話ししていると、
生育期の失敗体験をきっかけに引きこもりになった人が多くて、そのまま大人になっている人がたくさんいました。
おもしろい絵を描く知的障害のある人がいて、これを世にだしたい!と思ったことを覚えています。
障害のある人が、障害なく、対等に社会と結びつくことができる一つの手段としたかった。
アーティストたちは、アートの世界では障害がない人たちだと思います。
とは言え、はじめは大変なことばかりでしたけどね。
———たとえば、どんなことですか?
安野さん
いざ絵を描こうとしても、「自分には絵なんて描けない」と思うアーティストがほとんどでした。
「ネコの顔は丸じゃないといけないのに私は丸く描けない」「こうあるべき」という気持ちがあるけど、自分にはそう描けないコンプレックスがあった。
でも、「それでいいんだよ」と、一人一人の作品を認めていくことで、時間をかけて自由に自分らしく描けるようになっていきました。
絵が描けるようになるまで、半年か一年かかる人もいました。
———そこにおられる、takuoさんは?
安野さん
takuoさんね、塗り絵はするけど、絵は描かなかった。
さりげなく「今日は描いてみる?」と勧めて、拒否されたら無理強いはせず、描くタイミングを待ちました。
半年かかって描きはじめて、それからどんどんどんどん、作品が生まれました。
はじめのほうの作品はtakuoさんの作品が多いですよ。
逆に、もともと絵を描くことが好きな人でも、「世の中にはもっとうまい人がいる・・・」と自信をなくしてしまっていることもあります。
一方で、絵を描くことに全く興味を示してなかった人でも、自分の才能にびっくりしている人もいます。
———工房はんどのアーティストさんと向き合う中で、大事にしていることは何ですか?
安野さん
「ほめること」ですね。
評価されずに生きてきた人を見てきたから、という背景もあるかもしれませんが、だから「ほめてあげる」とは違う。
だって、僕には絶対描けないものを描かれますからね。
いつも「え!それどうやって描いてんの!?」という会話が尽きません。
それぞれの描き方が身についたら、すべて本人に任せます。
作品の良し悪しは、お客さんが判断しますからね、僕ではない。
アーティストたちは、アートの世界では障害がない人たちだと思います。
いわば、アートの世界ではバリアフリーが成り立っている。
今まで、世に出す機会があれば、出すだけ出してきました。
パラリンアートにたくさん出して、選ばれると、いろんな企業の人たちが見つけてくれます。
これまで、企業のデザインや年賀状のデザインに採用されてきました。
名刺に関しても、コンペ式で工房内のアーティストの作品をお客さんが選ぶ場面がありますが、ショップの商品が売れたりすることを踏まえると、一人一人の実績は偏ることがあまりないです。
———そうなんですね!いつも似顔絵を選ばせていただく時、いつも同じアーティストさんに偏っていないかな?と少し心配でしたが、それを聞いて安心しました。
安野さん
名刺の依頼をうけたら、似顔絵を描きたいアーティストを工房はんど内で募集して、集まった似顔絵をすべてオーダーしてくださった人に見てもらい、その中から選んでいただくというコンペ形式をとっています。
「選ばれたい、でも選ばれなかったら・・・」というドキドキ感をもちながら、参加してくれています。
名刺でも何でも、選ばれたら「おめでとう」と言い合います。
結果的に、一部のアーティストに偏ることなく、いろんな作品が採用されていて、ニーズや好みっていろいろだなと改めて実感しています。
———アーティストの皆さんは、どんな人が多いですか?
安野さん
年齢は、支援学校卒業したての若手から、50歳代後半の人まで。
4分の3が女性。障害の種別は様々。
工房はんど立ち上げ当初の人たちは、絵を描くことなどが生活の中でほとんどなく、自信も興味もない人がほとんどでした。
最近は、絵を描くことがとても好きで、自分の描いた絵をいろんな人に見てもらいたいという人が集まっています。
でも、どこか自信ないひとが多いかな。
———やりがいを感じるときは、どんな時ですか?
安野さん
私の知る障害のある多くの人は、成育期の中で失敗体験を繰り返し、自信をなくしてしまっている。
でも、心が安定すれば、彼らは自分のもつ最大限の力を発揮できると信じています。
アーティストには、精神+うつなど、色んな環境が原因で二次疾患のある人が多くいます。
その人が安定してきたときが、嬉しいですね。
———今後、工房はんどでやっていきたいことはありますか?
安野さん
利益を求めてしまうと、大量発注しないといけなくなる。
せかせかせず、自分たちのペースで制作活動できるこの空気を大事にしたいですね。
当初からの理想は、一人一人を“アーティスト”として位置づけて、店頭での雑貨販売だけでなく、外部に“デザイン”として売り出していくこと。
これからは、アーティストの作品がもっと世の中で活躍できるような仕組みをつくりたいですね。
でも、まずは「就労継続支援B型事業所工房はんど」としての役割を見失わず、
できることからひとつひとつ積み上げていきたいと思います。
\編集後記/
名刺を注文すると、とってもユニークな似顔絵から、すごく本人に似ている似顔絵まで実に多彩で、「アーティストの皆さんに一度会ってみたいなあ」と思っていました。
この日、偶然にも、私の名刺の似顔絵を描いてくださったnakamuraさんがおられて、嬉しくて、思わず握手を交わしました(#^^#)
あたたかい雰囲気の工房内で、リラックスした表情で制作活動に励む皆さんを見ていると、安野さんの「心が安定すれば、彼らは自分のもつ最大限の力を発揮できる」という言葉に、なるほどなあと感じました。
何と言っても、一人一人の持ち味を、職員さんだけでなく、アーティストさん同士で認め合っている。そして、持っている力を信じておられる関係性が、素敵でした。
ここには書ききれないほどのたくさんのエピソードがありました!
工房はんどの皆さん、ありがとうございました~!(義岡)
取材班:義岡、髙木、石井、水本さん(カメラマンとして。ありがとうございます!)
◆工房はんどのプロフィール
2016年12月開所。雇用されるのが難しい障がいのある人に、はたらく場を提供している障がい福祉サービス(就労継続支援B型事業)。
近鉄滝谷不動駅から徒歩30秒のところに事業所がある。当時、利用者5名からスタートし、現在20名の登録者。
手描きの絵やデザインから、独自にテキスタイルを作り、裁断から縫製まで自社で製造・販売している。
手づくり雑貨だけではなく、企業などへデザインを提供し、二次利用されている実績も増えている。
<主な活動実績>
2017年10月 一般社団法人障がい者自立推進機構パラリンアートの大阪府公式提携法人となる。
2018年、富田林市ブランドの認定を取得(富田林市をイメージさせる、オリジナルテキスタイルデザイン「カードケース」、オリジナルデザイン「ハンドミラー」)
工房はんどでは、手書きのイラストからテキスタイル(布)をつくり、世界にひとつだけのオリジナルグッズを作る企画もしています♪
興味のある方は、工房はんどにお問い合わせください!