こんにちは。サポネアンバサダーの高木です。
今回は、
「ソーシャル・マジョリティ研究 コミュニケーション学の共同創造(コ・プロダクション)」(綾屋紗月編著、金子書房)
という本を紹介します。
なぜ、この本を紹介したいかというと、僕は、「ソーシャル・マイノリティ」という言葉は聞きなじみがあるけれど、「ソーシャル・マジョリティ」という言葉は、この本でしか見たことがないからです。
ソーシャル・マイノリティは、直訳すれば、社会における少数者、少数派という意味ですが、社会において力関係で弱い立場にある人々を指す言葉です。障害者やLGBTQ、ホームレス状態の人々などの他、女性のように、数の面では半数近くいる集団も含められます。
ソーシャル・マジョリティは、社会的多数派のことで、ソーシャル・マイノリティの対義語です。
この本は、発達障害をもつ人たちが、自分たちが抱えるコミュニケーションの困りごとを元に、ソーシャル・マジョリティ(社会的多数派)の暗黙のルールやしくみを解き明かして、コミュニケーションにおける社会の問題の整理をしようと試みたものです。
この本を読むと、普段何気なく人とのコミュニケーションをとっていますが、なぜ無自覚にできているのか不思議になります。
この本を読んでコミュニケーションのしくみを知れば、いかに複雑で特殊なことを当たり前のように思っていたのか、当たり前に思っていたことが一つのあり方に過ぎないことがわかります。
発達障害の診断名の一つであるコミュニケーション障害は、本来は、一方的に発達障害をもつ人たちだけの問題ではなく、コミュニケーションをともに行うソーシャル・マジョリティのルールやしくみの問題でもあることに気づきます。
僕は、脳性まひで上手く話すことができないので、普段は、コミュニケーションボードという50音が書かれた透明文字盤を使って、1字1字読み取ってもらって、僕の伝えたいことを話しています。コミュニケーションボードを読み取ってくれる人がいれば、コミュニケーションに不自由を感じないけれど、いないと困ります。
僕のような身体障害をもっている人は障害が見えやすいので支援を受けられるのですが、発達障害をもつ人たちは見えにくいので支援が受けにくい現状があります。また、他者の理解の能力が求められる社会になって、コミュニケーションの困りごとを抱える人が増え、発達障害と診断される人々が増えてきています。
僕は、2015年に、大阪の難波市民学習センターで行われた「自己感の破たんと再生―アディクション・痛み・発達障害をつなぐもの」というセミナーに参加して、この本の編著者の綾屋紗月(あやや さつき)さんと著者の一人の熊谷晋一郎(くまがや しんいちろう)さんのお話を聴きました。
セミナーの後、帰るタイミングが重なって、新大阪までご一緒しました。貴重な体験をしました。
高木智志