読書の秋
お勧めの本1.
「沈みゆく大国アメリカ」「沈みゆく大国アメリカ・逃げ切れ日本の医療」堤未果
著。(集英社新書)
日本の健康保険のすばらしさを再認識させられる。「アメリカには、社会保険がない」と以前から聞いてはいたが、先進国なのに。○○がない。という表現に似つかわしくない、と思っていたが。
「日本中、どこへ行っても、保険証一枚で、3割負担で、診療を受けることができる。」ことが、信じられないくらい素晴らしいものだ、と思われている。手術一つで、財産をなくすそうだ。お金持ちは、企業保険や個人保険で賄っている。ほとんどの一般人は、だから、病気になっても病院に行かない。
アメリカの医療や、病気に関する生活状況を読むと、今まさに、日本が、その状況になろうとしているのがよくわかる。日本が明らかに、後を追っているアメリカ。儲け主義。企業の論理が(企業の論理だけが)まかり通る。「経済第一・景気回復」を掲げる日本の行く末が見えるよう。経済のグローバル化。全ての規制の緩和政策。関税を引き下げ、世界の企業が日本の産業に乗り出してくる。アメリカ産業界が、次にねらっているのは、日本の医療だそうだ。大企業が競争に勝ち、貧富の差は拡大する一方。
(と言っているうちに、TPP協定は、大筋合意に達したとか。日本の農業が危ない。)
「貧困大国アメリカ」(岩波新書
出版)に引き続き、大国アメリカの病部を取材、研究している。ニューヨークで生活し、9.11を体験した著者が、「以前は好きだったのに」の、アメリカに対する思いと、日本に対する警告を発している。
お勧めの本2.
今を話題の白井聡・著「永続敗戦論」(太田出版)
例えば、「しかし、こうした政治家個人の手腕の拙劣さに議論を収斂させることは、問題の著しい矮小化以外の何物でもなかった。」などという、文体の難解さに、ちょっと「カッコええ」と思ってしまう。しかし、今まで、なんとなく、思っていたことが、はっきりと断定され、「あ、やっぱりそうか、すっきりした。」と思え、「そこまで、思わなアカンかったんか。」と、引き込まれる。
第2次大戦の終結を「敗戦」と呼ばず、「終戦」と呼ぶことが、戦争の責任を決して取ろうとしない、「戦後」の政府の態度を示すものであり、歴史認識を加害者ではなく、被害者として固定してきたやり方が無責任そのものである。と。まだ、読んでる途中です。
読書の秋ですが、しんとした秋に、しんと読める本ではないです。安全保障関連法が、成立した今、改めて、反論のための論理構築に備えたい。
2015.10.30久保秀美