冬、夜に、寝床に入って、パジャマの背中の裾をキュキュッと引っ張って、皺を延ばす。袖をキュキュッと引っ張って、袖の皺を延ばす。頭で、枕を頭の形に合わせる。掛布団を引っ張って、肩まで掛け、左の肩に乗っている小さいオッサン(いるよね。特に左肩)を追い払い、掛布団を右手で左肩の下に、キュキュッと入れて、肩口の隙間を埋める。右肩も同じように、左手で、掛布団をキュキュッと、右肩の下に引き入れる。フーッ!これで、ゆっくり寝られる態勢になったかしら。全身の力を抜いて…「もう一ミリたりとも動かないぞ」と目をつむる。
と、その時、まどろむ寸前に、鼻の頭がかゆくなる。(この期に及んで!)または、右の頬の上に小さな小さな埃が落ちたか、むずむずする。
埃を取って、掻くか、がまんして寝てしまうか。ここが、思案のしどころ。
ええい!かゆいぞ!掻いてしまったら、また、最初からやりなおし。キュキュッと…
いつになったら、寝られるの?
久保秀美