『ママ~! 髪きって~』
と、長男。
課外教室のサッカークラブより帰宅後の第一声。時間は、午後7時半を回っている。
私は、『え~疲れてるのに』と一瞬思ったが、伸びすぎた髪が汗で濡れ、少しくせっ毛の髪が余計に縮れて、誰かに『髪型へん』と言われたのか心配になった。
しかし散髪は、一週間以上も前からの約束だったのを思い出した。プールの授業が始まるまでに済ませるはずが、うっかり忘れていた。すでにプールも始まっている。
その日は、夕食の準備も終わり、後はお風呂に入るだけ。『よし!やるか』と手早く行動にうつした。うちの散髪は風呂場。ハサミとクシを持ち二人で裸になり風呂場に入る。長男に希望の髪型を確認し「さ~切るで!!」と意気込んでハサミをバシバシいれていった。 裸で散髪を行うものだから、切り落とした髪が体中に落ちてまとわりつき、かゆくなる。特に、長男はアトピーなので時間との勝負だ。
20分後。見事、バサバサに伸びていた髪はスッキリし、希望通りとはいかないが、ハサミの一本使いにしてはよいできだ。2人共、大満足。
次の日。
『先生に髪切ったで!っていったら、へ~誰に?って聞かれたから、“ママ”って言った』と、私を喜ばしたい気持ちも加わり得意げに話す長男。
私は、先生が『誰に?』って聞くと言う事は…と思ったのと同時に『“ママ”って言ったん』と笑って聞き返した。
長男、小学5年。私が小学5年の頃友達で、しかも男子で“ママ”なんて読んでいる子は自宅ではともかく学校ではいなかった。もし、そんな子がいたらきっと友達にからかわれていただろう。
私は、また笑いながら「“ママ”って言って恥ずかしくないの?何歳まで“ママ”って呼ぶの?」と聞いてみた。
息子は、ニヤニヤしながら『ずっと!!』。
私は、なんとなく嬉しかった。『そっか~ママも今でもママ・パパと呼んでるし。。。いいよな~』とニヤニヤ答えた。しかし、こんな私も、さすがに学校では“お母さん”と呼んでいたが。。。
まー今更、お母さんと呼ばれるのも、こしょばがゆくしっくりこない。それに、なぜか『お母さん』の響きは、私には位?が高い気もする。
私の想う『母』にはなれていないからだろう。
でも、近い将来、“ママ”でも“お母さん”でも“お袋”でもなく“くそババア”などと呼ばれ日が来るのだろうか。せめて“おかん!!”で留めてもらいたい。
そんな長男との会話の中、次男が帰宅。
まん丸い顔に汗をびっしょりかき、髪をゆさゆさ振りながら『“ママ~”拓馬も髪切って~』と、ニッコリ笑う。
うちの子供達の美容院は、まだまだ、自宅の風呂場。
心得ている、次男はそそくさと服を脱ぎ、ビニールを首に巻き付け風呂場へ…ちょこんと座りまっている。
最近では、飼い始めた犬も加わり、新たなお客さん(犠牲者)誕生と挑戦が始まった。
私は、想う。
子供達が巣立つまで『ママ~』と呼ばれ、美容師とトリマーの腕をあげ『自宅美容院』を続けていきたい。
家じゅうに、髪の毛と愛を撒き散らしながら。。。
さあ!もう夏だ!
さっぱりして、出かけよう!
taniba yuki